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死因は交通事故だった。享年二十九歳。三十路を目前にして、独身、彼氏無しの寂しい人生に幕を下ろした。
そんな私が次に気が付いたのは、金髪や銀髪や赤毛、緑の髪やピンクの髪の人さえいる、異世界だった。幼かった私はいきなり前世の記憶が蘇ってしまい、高熱を出して寝込んだけど、記憶を取り戻して良かったと思う。
なぜなら、私は超がつく美少女に生まれ変わっていたのだ。
透けるような白い肌、薔薇色の頬。卵形の顔は愛らしく可憐で、大きな眼は星を散らばめたような明るい翠色。鼻筋はすっと通っているし、小さめの唇は何も塗らなくてもプルプルのピンク色。
可愛い、と鏡に向かって何度叫んだことか。
しかも、実家は伯爵家。令嬢である。お嬢様である。
本当なら、私は勝ち組だっただろう。本当なら。
「……アリシアお嬢様、また鏡を見て薄ら笑いを浮かべているわ。不気味ね」
「まったくだわ。あんな外見に生まれてしまって、審美眼がおかしくなってしまっているのよ、きっと」
「おかわいそうなお嬢様……」
……はい、そうです。うちのメイド達の会話です。
そうなのだ。私はとっても可愛い、美少女に生まれ変わった。……元の世界と美醜があべこべな異世界で。
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