episode1

6/8
前へ
/3000ページ
次へ
sideシーラ 結局その日、シアは来なかった。 きっと忙しかったんだ。 シアにだって都合はある。 きっと今日なら来てくれるよ。 1人でいるのは得意でしょう? だって、この数年間ずっと1人で海にいたんだから。 ***************** sideリゼル ようやく夜会の2日目に入った。 結局昨日、兄様は誰とも踊っていない。 そして、あいも変わらず仏頂面だ。 それには理由がある。 シーラに会えていないのと、今夜が嵐だからだ。 シーラのことが心配なんだろう。 「兄様、頼むから機嫌を直してくれ。」 夜会だと言うのに困ったものだ。 「僕はご機嫌だよー。」 どうしたらいい。 とりあえず誰かと踊らせないとな。 「兄様、あそこにいるのはリースウッド公爵の娘のダイナ嬢だ。 この辺りでは1番美しいと言われている。 ダンスに誘うには申し分ないだろう?」 兄様は美しい令嬢を見てすぐにそっぽを向く。 「確かに綺麗だけど、シーラの方が美人だよ。」 人魚と比べては誰も勝てないだろう。 「シーラは人魚だから美しくて当たり前だ。」 全てをシーラと比較していたら兄様の目に止まる女性はいなくなってしまう。 「ここにシーラがいてくれたらなぁ……。」 また兄様は無茶を言う。 「ここにはいない。」 「うん、だから会いに行こうかな。」 「ダメだ。」 何度俺に食い下がる気だ? 「あー、つまんないなぁ。」 昨日からこれの繰り返しだ。 「シーラはこういった夜会には出たことがないはずだ。 話をしてやるときっと喜ぶだろうな。 まぁ、その様子じゃ無理だろうが。」 これならどうだ? 「……」 少しは効いているな。 「俺は楽しませてもらうとしよう。 シーラと夜会の話が弾んでもっと仲良くなれるかもしれないしな。」 俺が一歩踏み出そうとしたら、兄様が立ち上がった。 「それは僕の役目だよ。リゼルはここにいて。」 「あぁ。」 俺は全力でニヤけるのを我慢した。 勝った……兄様に勝った……!!!
/3000ページ

最初のコメントを投稿しよう!

241人が本棚に入れています
本棚に追加