episode1

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sideシーラ   真夜中の海の中で静かに波の音を聞いていた。 私はこの音が好き。 心が安らぐ音だから。 ふわふわと海を漂っていると、月明かりが遮られた。 よく見るとボートが一隻私の真上にある。 こんな真夜中にどうしてボートが? どこかの港から流れ着いたのかな? 私は何の気無しにそのボートに近づいた。 海面から少し顔を出すと、男の人がボートに座っている。 黒い髪に金色の瞳、頭には立派なツノが生えていた。 ツノ……すごい。 ツノは真上に伸びているわけではなくて、後ろに流れているような大きなツノだ。 あのツノ触ってみたい。 好奇心に勝てなかった。 私はボートにさらに近付いた。 「こんばんは。」 近付いている途中で気付かれて私は体をビクッと振るわす。 「生きた人魚を見るのは何年振りかなぁ。」 優しい笑み。 悪い人じゃなさそう。 「こんばんは…。」 誰かと話すのは何年振りだろう。 私はさらに近付いてボートに上半身をかけた。 「僕が怖くないの?」 彼は私にそう聞く。 「うん。」 だから私は素直に答えた。 「あなたは誰?どこから来たの?」 私の質問を聞いて彼は笑う。 「僕はシア。どこから来たかって言うと…そうだなぁ、北の方かな。」 北の方には確か大きなお城と町がある。 きっとその町から来たんだわ。 「君の名前は?」 自己紹介なんて何年振りなの…! 「私はシーラ!」 嬉しさのあまり少し声が大きかった。 シアが驚いてる。 「シーラ、よろしくね。」 この優しい笑顔に好感しか覚えなかった。      シアの顔が半端じゃないくらい格好いいのもあるけど。 「うん!よろしくね!」 嬉しかった、心の底から。 子供のように浮かれて、懐いて、あなたが本当はかもしらないで。 無知ほど愚かしいものはない。
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