episode2

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sideシーラ 人魚を食べる輩がいる、その言葉に恐怖を感じた。 私たち人魚が少ない理由はこれにあるから。 人魚は他の種族から食べられて滅ぼされかけていると言っても過言ではない。 人魚の血肉、特に心臓には不思議な力が宿っていて、それらを食べると魔力の向上や治癒力の向上が見られる。 とんでもないご長寿さんもいるとか。 そんな理由で人魚は大昔から狙われている。 昔は人魚狩りも盛んだったらしい。 今は人魚自体が少ないから狩をする人はほとんどいないけど。 「ごめんね、怖がらせるようなことを言って。 でも、シーラに何かされた後だと遅いから。 だから、僕と約束して?」 シアは心配そうに私の頬を撫でた。 私自身、誰かに食べられるのは嫌だ。 だけど、シアに心配させたりこんな顔をさせるのはもっと嫌だ。 会ったばかりなのにそんな風に思うのは不自然かな? それでも私は自分に正直でいよう。 「約束する!だからもうそんな顔しないで?」 私はシアの笑った顔が好き。 私が約束する事によってシアが安心するならそれでいいじゃない。 「うん、ありがとう。」 しばらく抱きあってたいけど…… 「シア、体が冷えるよ?」 「大丈夫。」 シアは人魚じゃないから大丈夫なわけない。 ヴァンパイアでもない、人狼でもなさそうだし…… 「ねぇ……シア。」 さっき翼を出していたよね…? 「シアは何?」 どんな種族なの? どうして翼が生えているの? 夜の闇に溶けるような真っ黒な翼だった。 そんな翼を持つ種族は1つ。 その種族は、冷酷無慈悲で狡猾だと母に教わった。 そして、人魚を好んで食べることも。 ほぼ確定しているようなものだけど、私は直接シアからシアの正体を聞きたかった。 「僕は悪魔だよ。」 やっぱり。 「シアは…他の悪魔とは少し違うの?」 私が聞いていた、冷酷無慈悲で狡猾な人には見えない。 「うーん、…そうだなぁ、ちょっと違うかもね?」 こんなにも優しいシアが悪魔だなんて未だに信じられない自分がいる。 「シアは私を食べないよね?」 私を無惨に殺したりしないよね? 「こんな可愛い子に酷いことはできないなぁ。」 私の質問が馬鹿馬鹿しくなってくる程、シアは殺意や敵意がない。 「でもそれは僕だけだから、他の人には会っちゃダメ。 いい?」 「うん、わかった。」 この敵意も殺意もない小さな約束が、あなたの甘く激しい支配の始まりだった。
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