episode2

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sideシーラ シアが帰ってから何時間かしてボートが海面に見える。 シアかな? それか…… 「リゼル…?」 私がそっと聞くとリゼルは振り返った。 「シーラ。」 私はすぐにリゼルの側に行った。 「どうしたの?」 珍しいね、1人で来るなんて。 「いや…少し、話があって。」 話? 「何の話??」 私はいつものようにボートに上半身をかけた。 「兄様の…シーラ、それはどうした?」 リゼルは私の左腕を指した。 「え?」 自分でも気づいていなかったけど、二の腕の裏にアザができている。 「これ…どこかで打ったのかな?」 「打ったのかなって、痛かっただろう。覚えてないのか?」 何度記憶を辿っても二の腕を打った覚えがない。 「うん…。」 本当にどこで打ったかな? 「ほら、手を伸ばせ。」 リゼルに言われる通りに手を伸ばした。 「違う、そっちの手じゃない。アザのある方だ。」 「あぁ!そっちね!」 私ったら何してるんだろう。 リゼルが呆れている。 「はい。」 リゼルは私のアザに触れた。 すると… 「わぁ…」 アザがみるみるうちに消えていく。  すごい… 「悪魔って、誰かを呪ったりするだけじゃないんだね。」 「悪魔?…知っているのか、俺たちの正体を。」 私は一度頷いた。 「さっきね、シアが教えてくれた。シアは悪魔だって。 弟のリゼルも同じでしょう?」 「あぁ。俺も悪魔だ。」 私が偏見をもっていただけだ。 悪魔は優しいし傷も癒してくれる。 「2人は悪魔なのにあまり怖くないね。」 リゼルは呆れたように笑った。 「お前くらいだ、そんなことを言うのは。 ほら、終わったぞ。」 アザが全て消えて心なしか腕が軽くなった気がする。 「ありがとう、リゼル。」 私がお礼を言うとリゼルは少し照れているようだった。 「別にこれくらい何でもない。それよりもシーラ、忠告したいことがあって来た。」 忠告? 私に?? 「何?」 怖いことなのかな? 「兄様のことだ。」 シアのことで忠告? 「シアが何?」 もしかして私、シアに何かしちゃったかな? それでシアが怒っているとか? 「兄様は悪魔だ。」 「うん。」 それはさっき本人から聞いたよ。 「つまり、その…兄様の言う、約束や契約には気を付けろ。」 約束や契約? 「どうして?」 そもそも、約束なんてほぼいつもしているようなものなのに。 「悪魔との約束を破ったり、契約を違反した場合は契約者に皺寄せがいく。」 リゼルの言いたいことは、もし私がシアとの約束を破れば私に何か被害があると言うこと。 「だから、俺たちのような存在とは安易に約束や契約を交わすな。 特に兄様とはな。」 シアと約束事をしてはいけない、その忠告をわざわざしに来てくれたんだね。 「でも、リゼル。 明日、シアと会う約束しちゃったよ?」 この約束を破ったら私はどうなる? 「それはただの口約束だろう。俺が言った約束は代償の伴う約束だ。  代償を伴う約束を破ると、悪魔は契約者にいろいろな条件を課すことができる。 それは行動の制限から魂の搾取まで多岐に渡る。 とにかく気をつけろ。」 代償を伴う約束はしてはいけないんだね。 「わかった、ちゃんと気をつけるよ。」 私がしっかりと返事をするとリゼルは私の頭をポンポンと撫でてくれた。
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