episode1

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sideシーラ いきなり消えてしまった、シアとリゼル。 シアは昨日、またここへ来ると言ってくれた。 それなのに…… 「まだかなぁ…」 シアはちっとも来てくれない。 ボートだけがポツンと海に浮かんでいる。 寂しい思いを抱えたまま、ひたすらボートにしがみつく。 早くシアに会いたい。 *************** sideシア 絢爛豪華な城と、着飾った男と女、贅沢な食事。 さらには優雅な音楽と、くだらないダンス。 いつまで見ていればいいのかな。 このつまらない玉座で。 「兄様、無表情はやめてくれ。」 玉座の隣に立っている僕の弟は、僕の態度に文句をつける。 「楽しいことがないのに笑うのはなぁ…。可愛い人魚でもいれば別だけど。」 「夜会が終わるまではダメだ。」 この夜会いつまで続くの? 「じゃあもうお開きにしようよ。夜更かしはよくないよ?」 早く終わればその分僕は早くシーラに会える。 「何を言っているんだ。夜会は3日間ある。」 え?3日? 「何それ、僕聞いてないんだけど。」 そんな話してたっけ? 「この間の会議でそう決まっただろう。話を聞いていないのは誰だった?」 あぁ、この前の退屈なあの席でそんな事言ってたんだ。 「3日も何するの?みんな暇だね。」 僕がそう言うとリゼルはため息をついた。 「とにかく兄様、3日間はここにいてくれ。それに、兄様もそろそろ妃を迎える頃だろう。 相手探しのためにも誰かダンスに誘ったらどうだ?」   見渡しても僕の気になる子はいない。 今は海にいるからなぁ。 「面倒だからいいや。 リゼルが誰かと踊ってきたら?」 「兄様を差し置いて俺が誰かと踊れるわけないだろう。」 本当、どうやったらこんなにも真面目に育つんだろうね。    僕がしっかりしていないからリゼルがしっかりしてるのかなぁ? 「気にしなくていいから踊っておいで?」 リゼルが僕から目を離してくれたら僕だって自由に動ける。 「兄様が先だ。それに、兄様から目を離して抜け出されでもしたらたまらない。」 さすが僕の弟、全部お見通しだね。 「はぁ……窮屈だなぁ。」 早くシーラに会いたいよ。
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