episode1

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sideシーラ 今夜は嵐だ。 しかもかなり激しい。 これじゃあシアは来られない。 寂しさは余計に膨らむばかり。 ふと視線を上にやると… 「あ!」 ボートがなくなっている。 私はすぐに海から顔を出した。 真っ暗で、風が強くて、海は大暴れ。 そんな中、一席の小さなボートが流れていかないわけがない。 探しに行かないと。 あのボートがないとシアが私を見つけられない気がする。 それは嫌だ。 どんなに時間がかかってもいい、とにかくボートを見つけよう。 私は決死の思いで嵐の海の中を泳いで行った。 *************** sideシア 次にシーラと会った時にたくさん話をできるように僕はダイナ嬢に近づいた。 「これはこれは、シア様。」 隣にいたリースウッド公爵はすぐに僕に反応した。 「リースウッド公爵、いきなりだけどダイナ嬢をお借りしても?」 ダイナ嬢は目を輝かせた。 「えぇ、もちろんです!さぁ、ダイナ。シア様のお相手を。」 「シア様、光栄です。どうか私のことはダイナとお呼びください。」 僕が手を差し出すと、ダイナはすぐに僕の手を取る。 「ほら、ダイナ。向こうで踊ろう?」 僕がダイナをエスコートすると、周りが避けて円ができる。 僕らはその円の中で踊った。 僕らが踊り出して少しして、リゼルも誰かと踊っているのに気づく。 僕のことをとやかく言うくせに、リゼルも大概つまんなそうな顔してるんだよね。 本当、あの作り笑顔を見ると僕が吹き出しそうだよ。 あぁ、それより… 「ねぇ、ダイナ。君は夜会が好き?」 「はい、好きです。」 よかった、夜会好きの意見が聞きたかったんだよね。 「どんなところが好きなの?」 僕の質問にダイナは嬉しそうに答えてくれた。 「そうですね、この雰囲気も音楽も全てが好きです。」 雰囲気と音楽ね。 シーラにはこの雰囲気と音楽の話をしてあげよう。 「へぇ、参考になったよ。ありがとう。」 ダンスはもう飽きちゃったなぁ。 「じゃあ、夜会を楽しんでね。」 聞きたい情報を引き出したから、僕はすぐにダイナとのダンスを終わらせた。 「えっ?あ……はい。」 さっきまでつまらなかった夜会が嘘のように楽しくなった。 これでシーラと話す事が増えたんだから。 それはそうとして心配は拭えない。 窓が揺れるほどの嵐だ。 シーラが怪我をしていなければいいけど。 この嵐を怖がっていないかな? もしも怖がっているのなら側に行ってあげたい。 早く会いたいなぁ。 あと1日だけ…。 こんなにも長い1日が存在するなんてね。 僕はどれほどシーラに魅入られているんだろう。
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