episode1

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sideリゼル 兄様がダイナ嬢と踊ったかと思えば秒で玉座へ戻ってしまう。 何やら機嫌が良さそうだ。 きっと、シーラに話すネタができたと浮ついているんだろう。 困ったものだ。 ダイナ嬢は困惑していた。 おそらく、人生の中で1番短いダンスだったはず。 恥をかかされたと怒らなければいいが…。 これだから兄様は。 後で俺が何かフォローを入れておくか。 *************** sideシア あの情報収集をしたダンスからようやく1日経った。 今夜さえ乗り切れば僕はシーラに会える。 話題作りも完璧だし会うのが楽しみだった。 とある侯爵の贈り物さえ僕の前に差し出されるまでは。 「シア様、ご招待ありがとうございます。 今宵は贈り物を持ってまいりました。」 名前は忘れた。 とりあえず白髪のおじさん。 「贈り物?わざわざいいのに。」 その贈り物とやらで僕に何を要求してくるんだろう。 僕はそっちの方が面倒だよ。 「一族一丸となって獲りました。さぁ、アレを。」 侯爵は召使に命令して石造りの箱を持ってきた。 また何持ってきたの? なんか血生臭い。 「昨夜獲れたばかりのものでして、嵐でどうなる事かと思いましたが…」 侯爵は得意気な顔でその箱を開けた。 その中にあるのは何かの心臓。 嫌な予感がした。 「ご覧ください、人魚の心臓でございます。」 ***************** sideリゼル ヒーリアス侯爵が何を送ったのかと思いきやこれはまずい。 「人魚の…心臓?………。」 よりによってコレか。 兄様は絶句している。 ヒーリアス侯爵は兄様の反応を伺うように見ていた。 周りが不審に思い始めている、これはまずい。 「ヒーリアス公爵…これは、その……どこで捉えたものですか?」 西の海だけはやめてくれ。 「西の海でございます。」 「髪は?」 兄様が静かに問いただす。 「髪、と申しますと…?」 「髪の色、何色だった?後、目の色は?」 西の海の人魚…… 俺たちが知っている中で1人しかいない。 「そこまでは分かりかねます。我々も必死に狩をしておりましたから。 首から上はその場で撥ねてしまいました。」 それを聞いた途端、兄様はフラッと立ち上がった。 「全員、解散。異論は認めない。」 声には怒りが滲んでいる。 ここにいる者たちは全員、兄様の静かな怒りに怯えていた。 そして、静まり返った広間から兄様はすぐに姿を消した。
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