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episode2
sideシア
僕がいつもの場所に降り立つとボートは消えていた。
翼を出し飛びながら辺りを探すけどシーラの姿はない。
「シーラ!」
ここであの馬鹿侯爵に襲われたのなら何か痕跡が残るはず。
と言うより、シーラの首が落ちているはずだ。
「シーラ……」
殺されてしまったのかな…
あんな権力と己の保身しか頭にない馬鹿に首を斬られてしまったんだろうか…。
暗い海が静かすぎて嫌になる。
いつもここへ来れば可愛い人魚が僕を迎えてくれた。
頬を撫でれば嬉しそうに笑ってくれていた。
それなのに……
「……シア?」
突然、下から声がした。
それは、僕が待ち望んだ声でもある。
「シーラ!」
不安そうに僕を呼んだのは間違いなくシーラだった。
「え!?シア飛べるの!?なんで背中に翼が!?」
安堵したよ、心の底から。
僕はすぐに飛ぶのをやめてシーラを抱きしめに行った。
「うわぁあ!!シア!!服が!!」
僕の想像以上にシーラは華奢だった。
こんな背骨、折るのは簡単だろうなぁ。
「シア//////あの……どうしたの??」
「……………」
黙っている僕を見兼ねて、シーラが僕の頬に触れた。
冷たい指先はぎこちなく頬を撫でてくれる。
「シア?嫌な事があったの?」
優しい子だなぁ。
僕は3日前、会いに行くと約束したのに結局シーラに会いに行かなかった。
「ごめんね、シーラ。」
約束を破った僕を怒っていないかな?
「何が??」
この様子だと何も分かっていないね。
「ほら、僕は3日前にシーラに会いに行くって言ったでしょ?
それなのにすっぽかしてばかりだったから。」
シーラは僕の目を見て優しく笑ってくれる。
「いいよ!そんなの!だってシアにも都合があるでしょう?
それに昨日は嵐だったしね。
あ!!私もシアに謝らないと!!」
シーラは途端に申し訳なさそうな顔をした。
「僕、シーラに何もされてないよ?」
何かされたっけ?
「ち、違うの……その……。」
シーラは僕には言いにくいらしく目を逸らしたり、もぞもぞしたり落ち着きがない。
「何?僕はシーラが何をしても怒らないよ?」
一体何をしたの?
「あ…のね、シアのボート、見つけられなかったの…。」
気まずそうに捻り出した答えはたかがボートのことだ。
「嵐で流されちゃったから、探しに行ったんだけどね…。
本当に一生懸命探したんだよ?」
僕はそんな事で怒るような男に見られてる?
それは少し残念だなぁ。
「一生懸命探してくれたんだね、ありがとう。
シーラは本当にいい子だね。」
僕がシーラを褒めると、シーラは顔をもっと赤くさせた。
「だけど、今度からボートは探さなくていいよ。
僕は何隻も持ってるから。
それと、僕やリゼル以外には顔を見せないで?
僕らとは違って人魚を殺して食べる輩もいるからね。」
僕の言葉を聞いてシーラが怯えたような顔をした。
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