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私は、タオルと保冷剤、体温計を用意して悠也の近くに座った。
悠也のワイシャツのボタンをもう一つ外し、腕を少し持ち上げて、体温計を入れる。
思いの外、筋肉のついた二の腕にドキリとする。
額や首元の汗をタオルで拭きながら、相手が目を閉じ意識がハッキリしてないのをいいことに、すっかり見入ってしまう。
男らしい形の眉、
長い睫毛、
口角の上がった唇、
顎のシャープなライン、
目の下と首筋のホクロ。
今までこんなにしっかり顔を見たことなかったな……
遠くから見ることしかできなかった。
近くにいたらいたで、面と向かってまともに目を合わせることもできなかった。
自分の気持ちを悟られることは、絶対避けなければならなかったから……。
…こんなに見つめたりして……
…何をしてるんだ……私は。
悠也のことは諦めるって決めた筈なのに……。
私は立ち上がり、大きく溜息をついた。
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