ふり、つもる

1/1
前へ
/1ページ
次へ
 窓の外には冷たい冬の景色が広がっている。空模様は曇天で、その下にちらつく雪が余計に寒々しさを伝えてくる。  それとは対照的に石油ストーブで暖められた部屋の中。四人の男たちが小さいテーブルを囲んでは、何やら作業に勤しんでいた。  黙々と手を動かしている最中、一人の男が手を止めて窓の外を見た。そして、ため息と一緒に言葉を吐き出す。 「まぁた、ふっちまった」 「気にすんなって。どの道、今日は帰らないんだろ?」 「当たり前だろ」  そんな軽口の後にジュースで喉を潤すと、男たちは再び作業に戻っていった。すると再びしんしんとした雪の夜長の静寂が訪れた。  言葉を発することなく、男は時たまに窓の外を見ては思ってた。  ふった。  ふった。  また、ふった。  そろそろ、つもってもいい頃だ。  一度つもったくらいじゃ帰れないけど。それでも早くつもってほしい。こんなにふったんだから、そろそろつもったっていいじゃないか。  つもれ。つもれ。早くつもれ。  そんな願いが通じたのか、ようやくつもってくれた。 「ツモ。リーチ、混一色、裏ドラ乗って跳満。一万八千ね」
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加