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淳志はパトカーに並べるように車を停めると、巡査と野次馬たちに軽く会釈をしながら、住宅の玄関に入っていく。
物腰は柔らかに謙虚に。サービス業に従事しているつもりで、笑顔で丁寧に市井の人々に接すること。感情が顔に出やすいという刑事として厄介な短所を補うために、淳志が考えついた処世術だ。笑顔で愛想良くするのを常としていれば、怒りtや悲しみがうっかり顔に出てしまったときも「感情表現が豊かな人」あるいは「共感能力が高い人」と相手に判断してもらえる。ここ一年、外では常時付けているマスクはそうした淳志の処世術の邪魔になったが、静かにするりと相手の懐に入ることのできる淳志は、刑事課で着実に人並み以上の成果を上げている。小柄で華奢な体格に童顔。以前はコンプレックスだった淳志の外見は、この職業では武器になる。
現場の住宅は玄関を入ってすぐに階段があった。顔馴染みの鑑識員、三池が階段の最下段を丁寧に調査している。遺体はすでに搬送が済んでいた。淳志と藤永は、そっと避けてくれた三池のすぐ隣に屈みこみ、遺体のあった場所に短く黙祷を捧げた。
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