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「階段から転落して、頭を強く打ったのが死因だと思う。遺体を発見した奥さんは、奥のリビングルームにいるよ」
マスク越しにもごもごと最低限の情報を告げる三池に、藤永は小さく頷いた。淳志は藤永の後について廊下の奥に向かう。
大原家は内装を一見して、裕福な家だとわかった。壁掛けの飾り棚には、戯れる二匹の仔犬を描いた絵画が掛かり、飾り棚の白い花瓶に花が生けてある。廊下の床は、隅々まで磨きあげられているようだ。藤永はリビングへの扉を二回軽くノックして、相手の返事を聞く前に開いた。藤永が扉を開けた瞬間、扉の向こうから柑橘系の香りがふわりと漂ってくる。芳香剤だろうか。マスク越しにも伝わってくるから、強い香りなのだろう。しかし決して人工的な鼻につく匂いではなく、爽やかで心地良かった。
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