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「管内で変死体が発見されたらしい」  山田(やまだ)課長が内線電話を受けたあとに発した一言で、調布警察署の刑事組織犯罪対策課に、ぴりりとした緊張が走る。紺野淳志(こんのあつし)は、ちょうど溜まっていた書類仕事を片付けたところだった。ここ一年でほとんど顔の一部のようになったマスク越しでも、課長の緊迫した様子が伝わる。いち早く課長と目が合った淳志は、同じ課の先輩刑事、藤永武文(ふじながたけふみ)と共に、現場に向かうように指示を受けた。  自宅で遺体が見つかったと通報があったのは、調布市北仙川町四丁目だ。京王線の仙川駅からほど近い、閑静な住宅街の一角。通報者は大原香苗(おおはらかなえ)、三十五歳。亡くなっていたのは、香苗の夫の拓真(たくま)、同じく三十五歳。本日、二〇二一年三月十八日、香苗が外出先から自宅に帰ってきた十七時半過ぎに、自宅の階段で拓真が絶命しているのを発見したということだ。 「……三十五歳か。俺より十も若いのに、気の毒だな」 「事故ですかね」
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