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誕生日
「姫様が昨日生まれたわね、
おめでたいことだわ。」
お母さんがニコニコしながら言う。
「あぁ、本当にめでたい。星花もそう思うだろ?」
わたしは頷いた。
自分のことしか考えてない。
姫様が生まれたから
自分たちは鬼に喰われない、大丈夫だって考えてる。
村のみんなも、お父さんとお母さんも。
でも、村のためにやってることなんだよね。
なんだか複雑。
朝食を食べ終わった後
スマホにメッセージがきていた。
遥からだ。
そういえば十六歳の誕生日おめでとう!!
え?
誕生日?
わたしは首を傾げる。
そしてすぐに明日がわたしの誕生日だということに
気がついた。
ありがとう(にっこり)と打ち
送信する。
すぐに既読がついてクマがクラッカーを鳴らしているスタンプが送られてきてわたしは微笑んだ。
夜
今日は寒いなぁ。
ベッドの中で胎児のようにうずくまる。
トイレ行きたい。
わたしはベッドから起き上がり
一階に降りた。
「□×※◯▲□×◯◯▲※□□□△■◆◇」
リビングから声が聞こえる。
お父さんとお母さん起きてるのかな?
「そんなこと言ったって仕方ないだろ。
星花は星の子なんだから」
え?
心臓が大きく脈打つ。
聞き違いだよね。
わたしは扉の隙間からお父さんとお母さんの
様子を覗いた。
「だって、星花はわたしたちのたった一人の娘
じゃない!!実の子どもじゃなくても家族よ!今まで一緒に暮らしてきたのに、星の子だからって
生け贄にするなんて、そんなのできないわ!!」
お母さんが大声を上げる。
「これは村の掟だ!
俺たちではどうにもできないんだよ……」
お父さんが悲しそうな顔をした。
「そんな……星花が可哀想だわ…」
お母さんがさめざめと泣いている。
わたしが、星の子?……
実の子じゃない?
「明日、神社から迎えが来る。せ……姫様は、
姫様は、鬼への生贄となるんだ」
「星の子は崖から落とされ死ぬのよ!
見殺しにしろと言うの?!」
……!!
そんな。
思わず後ずさる。
その拍子に壁にぶつかりゴンッと鈍い音がした。
「……星花?」
お母さんの声。
「そこにいるの?」
わたしはパジャマのまま玄関を飛び出した。
後ろからお父さんとお母さんの声が聞こえてきたけど
わたしは走り続けた。
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