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星降り
年に一度、星屑が降る日がある。
村の人はこれを星降りと呼ぶ。
星屑は降り積もって、山になる。
そうしたら
星屑の山の中から星の子と呼ばれる女神が生まれる。
なんで男神は生まれないのかわからないけど。
みんな星の子を崇拝していて
姫様と呼ぶ。
星の子は災いを寄せ付けない力を持っているとされている。だから星の子は、十六歳になった時、
村を守るための生け贄にされる。
鬼に村のみんなが喰われないように。
この村の名は星降村。
今年も星降りがやってくる。
わたしは星々が輝く夜空を見上げた。
「星花!」
よく知る声に振り返る。
「遥」
わたしの幼馴染の遥だった。
「星花も、星降り見に来たのか?」
わたしは、頷いた。
「うん」
遥がわたしの隣に腰を下ろす。
「星の子って可哀想よね」
ため息をつきながら言うと遥は首を傾げた。
「どうしてそう思うんだ?」
「だって、生まれた瞬間から生贄にされる運命にあるのよ、わたしだったら嫌だな。逃げ出したく
なるかも」
鬼に食べられちゃうなんて嫌だ。
「それも、そうだな。」
遥は夜空を見上げた。
「うん、星花が生け贄にされるのはオレも嫌だ」
遥と目が合う。
月の光に照らされて、
遥の顔が大人っぽく見えた。
照れ臭くてうつむく。
「始まったぞ!星降りだ!」
村の人が大声を上げて
みんなが夜空を見上げる。
もちろん、わたしたちも。
銀色の光が一筋夜空に線を描く。
線が消えた後、次々に銀色の光が
夜空を駆けた。そして、地面に光り輝く、
小さな山を作る。
星屑が降り積もり、山は高さを変えていく。
山が、身長百七十くらいある遥を超えたとき
「オギャァ、オギャァッ」
と、赤ちゃんの声が聞こえて、
巫女たちが山を崩して、赤ちゃんを取り上げた。
「姫様の誕生だ!」
村長が喜びの声をあげる。
村のみんなは騒ぎ立てる。
「これで、しばらく村は安泰だ!」
「姫様バンザイ!」
赤ちゃんは無邪気に笑っていて
まだ、自分の運命を知らないのだと思うと
胸が痛んだ。
「星の子の誕生か。」
遥が呟き、表情を曇らせた。
きっと、彼もわたしと同じことを思っている。
願わくば、十六歳になるその時まで
幸せに暮らすことができますように。
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