文鳥とモモンガ。

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「まじ見分けつかないよね。俺に頼んだ奴もわかんないと思うけど」 「じゃぁどれでもいいんじゃね?」 「飼い主ならわかる気もするからなぁ。この飼い主ね、急に出張になったからって友達のホストに預けたんだよね」 「なんだその営業。客も客だよ。何故ペットホテルに預けない」 「急で取れなかったんだったんだってさ。だから俺経由で徳田さんに頼んだんだよ」 「ああ、お前顔広いからな」  店内には8体のモモンガがいた。オス2、メス6で6匹に絞られたが、そこで梅宇は頓挫した。本当に見分けがつかないのだ。まだ文鳥の方が違いがわかる。その友達とやらはケージごと預けたらしいがケージにも特徴がない。 「困ったな。今日そのお客に返すらしいんだけど」 「その客を連れてきて選ばせればいいじゃないか」 「友達の面子が潰れちゃう」 「知るかよ」  梅雨は頭をかきながら徳田がメモを残してないか漁っだけれども、何も見つからなかった。だから仕方なく、その辺のクリップをまっすぐに伸ばして鍵付き戸棚をピッキングして徳田の履歴書だとか資料を取り出す。 「凄いね。ひょっとしてつゆちゃんヤバい仕事もしてんの?」 「危ない真似なんぞするか。1級鍵師を取る時習ったんだ。実地で使うのは初めてだ」 「今日から泥棒になれるじゃん」  不機嫌そうな梅宇が仕入れ簿と売上を照らし合わせた結果、この店の在庫のメスのモモンガは5頭とわかる。だから1頭はやはりその友人とやらの持ち込みなのだろう。  従業員名簿から徳田の連絡先を見つけてかけると4コールほどで繋がった。これでなんとかなるだろう。そう思って梅宇が胸を撫で下ろせたのも束の間だった。
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