埃の結晶

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埃の結晶

 冬の季節に雪が降る。  ヒトが生きただけ、世界に影響をあたえるみたいに。  生きれば生きるほど、降り積もってゆく生きたこと。  人々の心に。  草花の上に。  空気の底に。  子供のころの記憶として、冬、降りしきる雪がこんこんと世界を白く染めてゆくのを、窓からあかずながめていた。  窓硝子に付いた水の結晶は綺麗で、指先でじわじわなぶり、溶かして、舐めたら埃の味がした。  私が今口にする食べものは、みんなそんな味ばかりだ。  ルマさんのくれるお菓子以外は。
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