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「――何を突っ立ってるニャ、ゴシュジン。入り口に立ってたら邪魔ニャ」
「わぁあ!?」
背後からいきなり声をかけられてまたまたひっくり返った。勢いでタオルもはだけてしまい、慌てて体を隠す。
そこには、でかい赤いリボンを頭につけた、黒髪で逆ボブカットの子供がいた。赤い瞳の吊り目、黒いワンピースを着て、背よりも高い箒と衣服が入った籠を持っていた。
そしてなにより、大きなリボンに隠れるようにして動いている耳が目を引いた。
「ほい、着替えニャ。早く着替えるニャ」
「だ、だ誰?! ニャニャ言ってるし! その頭、耳!? 猫耳!?」
『あ。この子がいましたね。使い魔なのでカウントするのを忘れてました』
「なんでお前は肝心なことを毎回言わないんだよ!?」
「いちいちうるさいニャ。ニャーはネコなんだから耳くらいあるニャ。新しいゴシュジンはほんとにうるさいニャ」
人を見るや否やすごく迷惑そうな顔で、すこぶる嫌そうに口を開いた。
『この子はネコ型の使い魔マタタビです』
「朝っぱらから部屋の中散らかして、掃除をするニャーの身にもにゃれニャ」
動転して気付くのが遅れたが、ずっと怒られてるな俺。
「マリアも勝手ニャ。いきにゃり魔女やめるニャンて無責任ニャ。それに中身がオス臭いニャ。ほんと身勝手ニャ。ゴシュジンもそう思うニャ?」
「あ。それは全面同意」
『変なとこで意気投合しないの。マタタビは基本的にこの屋敷の掃除や炊事などの奉仕を務めています。お風呂の間に部屋を片付けたのもこの子ですよ』
「そ、そうだったのか。すまなかった。臭かっただろうに」
ただでさえ腐った卵のような硫黄臭さのある薬品臭だ。風呂から戻ってくる合間に掃除をして臭いすら残っていない。
「世辞はいいニャ。それより着替えるニャ。風邪を引いても看病は管轄外ニャ」
猫耳姿の少女が地面におろした籠を足で押してきた。何度も催促されていたからもあるが、明らかに子供の姿で見下されて蔑まされて何だか泣きそうな気分だ。
「着替えが終わったら朝ごはんニャ。食堂に来るニャ」
「あ、ありが……」
お礼を言う前に扉を閉められてしまった。最後まで機嫌が悪そうだったな。
『あの子はいつもああなので。ネコですし』
「それ、説明になってない」
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