ブラック企業だっ!

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 朝を告げるアラームが鳴り、篠崎が目を覚ますと、彼が寝ていたベッドが起き上がった。  窓にかかったカーテンがひとりでに開き、手首に巻いたウェアラブルウォッチが、この日の体調が万全である事を合成音声で伝えてくる。  寝室を出て、顔を洗って歯を磨くとリビングへ向かった。  テーブルへ座ると、ニュース番組が目の前の空間に浮かび上がる。  奥のキッチンでは、3Dフードプリンターが稼働し、ウェアラブルウォッチから送られた情報を元に、今の篠崎のコンディションに最も最適な朝食を作り始める。 「ご希望の味を選択して下さい」  合成音声が聞こえると、篠崎は手首の端末を操作した。メインはスープカレーで、後はグリーンサラダとアップルジュース。  ほどなくして選んだ味の朝食が運ばれてくる。材料は一種類しか使われていないようなものだが、味や食感、見た目は忠実に再現されている。そこに必要な栄養も加えられている。  食事を終え、適切な食休みをとった後、クローゼットへ向かう。  扉を開くと、今のファッショントレンド、今日の気候、篠崎の趣味や容姿に合わせたコーディネートが用意されている。  小さめの白無地ポロシャツに明るい色のデニムパンツ。シャツはイン、ズボンはお腹まで上げてピッチリと履く。髪は頭の左半分を大胆に刈り上げ、右側の前髪を顎の辺りにまで垂らしたアシンメトリースタイル。  バッチリと準備を済ませて、篠崎は自宅を後にする。
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