花にひとひら、迷い虫

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 風が吹き、白衣がはためく。閉じたドアを見つめながら、まだぬくもりの残る白衣を抱きしめる。  誰もいなくなった屋上で、花音は涙声でつぶやいた。 「律……、嘘ついて、ごめん」  その声は、風に乗せられ、森の中へ運ばれて消えた。
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