第1章 生クリームが生んだ悪

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  10月1日。  ハロウィンがはじまる月に、わたしは誕生日を迎えた。図工の授業で作ったブタの貯金箱をようやく叩き割る瞬間が訪れたのだ。  3時のおやつに焼いもばっかり食べているような、地味で子供っぽいわたしはもうおしまい。クレープとかパンケーキとか、甘~いスイーツをいっぱいほお張ったり、カラフルポップな雑貨を集めたり、リップグロスをぬってプリクラを撮ったりしちゃう、キラッキラのJSガールになるんだ。  貯金箱をトンカチで「エイ!」と割ったら、パパへのイライラがスーっとした。悲しすぎるおこづかいたちと涙の再会。チャリンと貯めつづけた100円玉がザクザクと中から出てきた。  いち、にぃ、さん――と数えたら、100円玉が30枚も貯まってた!夢に見た1000円札が3枚分!これにアップしたおこずかいを足したら全部で3500円!胸の期待はバルーンみたいに一気にふくらんで、それはそれはもう、瞳からラメがあふれちゃうくらいに心が弾んだ。わたしはこのお金をパァーっと使うと決めていた。  だって、こんなふうにキラキラできるのは、今しかないもん。
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