第1章 生クリームが生んだ悪

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3.そして奴らは現れた――  待望の「竹下通りデビュー」の日。  学校で「さよなら!」とテキトーにあいさつした後、わたしは空詩ちゃんと手をつないで教室を飛び出した。校門を出て、ランドセルをゆっさゆっさと揺らして、代々木上原駅までハイパーダッシュ!  駅員さんに「原宿行きの電車はどれですか!」って聞いて、すぐさまメトロに飛び乗った。 「原宿だけど明治神宮前でおりる……原宿だけど明治神宮前でおりる……」って空詩ちゃんと何度も唱えていたら10分くらいで到着した。  竹下通りは明治神宮前駅から歩いて5分もしないところにある。目の前に『タケシタ・ストリート』と書かれた大きな門が現れて、わたしたちは興奮した。 「空詩ちゃんこれこれ!テレビでずーっと見てたやつ!」  メインストリートは奥の奥まで大混雑。観光客のグループや、同世代のJSたちが門の外まであふれかえっていた。2人でせーのと門をくぐると、ワッフルの甘~い香りがふわっときた。  プリクラショップの入口に立っていたスタイルのいい人形が「TRY WITH ME!」とポーズを決めている。ファッションブランドの店頭に並ぶパステルカラーのハートリュック。ソフトクリームのスマホケースも可愛すぎ。アクセサリーコーナーにある、ピンクリボンのゴムも超キュート。  どこもかしこも、カラフル&スウィート&ファンシー。胸の中にたまっていたシャボン玉が「パシャン☆」と一斉にはじけだした。  キラキラ……ラメラメ……キャピキャピ……キュンキュン♪   女の子スイッチをONにして、今日は思いっきり竹下通りをエンジョイするはず――だったのに。  まさかこのとき、自分がほっぺプニプニ軍団に狙われていたなんて思いもしなかった。
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