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「ぷーにぷに、ぷーにぷに……」
お経みたいな声をそろえて、不気味な5人組が近づいてくる。
『ほっぺプニプニ軍団』なんてふざけたネーミングだけど、ヤツらはとっても異様だった。目つきがヤバイ。ねじが2、3本とんでる。なんていうか、真っ黒けなおめめの奥から、ほっぺに対する飢えみたいなものがダダもれているのだ。どこぞの映画のゾンビかってくらい、その顔つきはイっちゃっている。
「しまった!」
身がすくんでいるうちに、前後左右をすばやく取り囲まれた。頭のてっぺんとおっぱいについたパンダ……。
パンダ🐼……パンダ🐼……パンダ🐼……パンダ🐼!
何でこんなに『パンダ』🐼🐼🐼なんだ!!
意味不明に多いパンダがだんだん恐ろしくなってきた。にた~っと垂れた目つきに迫られると、おぞましさが倍増する。
「カンナちゃん……わたし……怖いよ!」
空詩ちゃんはわたしの背中にしがみついて、何も見ないようにビクビクと震えた。そんなぁ……と思った。空詩ちゃんはわたしを盾にして自分だけ隠れてる。どうしてわたしを盾にするの……。わたしだってこわいのに――。
恐怖の場面に立たされて、わたしはそんなことを思ってしまった。
マンガの主人公ならこういうとき、弱い友だちをかっこよく守るのだろう。それでこそホンモノの友だちだし、正しい友情のカタチだってわかってる。
でも、こんな得体のしれない軍団に何の心の準備もなく襲われたら、誰だって戸惑う。どうしたらいいかわからないし、何とかしてと言われても怖いものは怖い。空手は習っているけれど、別に強くなろうとしていたわけじゃない。ただ、嫌々やってきただけ。
わたしは全然……勇敢な女の子なんかじゃないんだよ。
ほんとうは誰よりも怖がりで、逃げたくて……。
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