第1章 生クリームが生んだ悪

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第1章 生クリームが生んだ悪

 ほっぺプニプニ軍団――。    それは、女子小学生のほっぺを狙う5人組の極悪集団だ!    黒いチャイナ服を着ていて、お胸に『パンダ』のアップリケをつけている。目元もパンダみたいに真っ黒け。メイクで素顔をかくしているけれど、男子高校生だってことはバレバレだ。  ファンシー雑貨にヘアアクセ、プリクラ、クレープ、パンケーキ――。  少女たちが胸をキラキラさせる聖地「原宿・竹下通り」に突如現れたこの軍団。彼らの目的はネーミングのまんま。女子小学生のほっぺを、ただひたすらプニプニするという理解しがたいものだった。  ある子の話によれば、軍団はもともと地味なフツーの高校生だったらしい。これといった特技もなく、何かで目立つこともない。汗をかくこともなければ、仲間と殴り合うことも、涙でほおを()らすこともなかった。  無趣味で、無感動で、無気力で、帰宅部で、モテない――。  存在感の薄い彼らは、青春らしき青春を渇望(かつぼう)していた。でも彼らには共通して『好きだ!』と声高に叫べるものが一つだけあった。  それは、原宿・竹下通りで大人気の甘~いクレープ。  ある日の学校帰り、クレープショップで偶然居合わせた5人のひょろ長い男子高校生は、「おひとりさまクレープ」を堪能(たんのう)する男子勢が自分以外にいたことに興奮し、その場のいきおいで『クレープ男子同好会』を結成。 「ぼくたちの持て余していた青春のすべてを、原宿のクレープに(ささ)げる!」  彼らは円陣を組み、右手を天にかざして誓い合った。
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