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クレープのモチモチ生地について平気で6時間も語らう彼らは、青春というものを生まれて初めて経験した。ファミレスでドリンクバーをぐびぐびと飲みながら、仲間と大好きなクレープについて熱く語り合う。
ウェイトレスに注文した『季節のいちごチョコクレープ』5人分。美しくデコレーションされたプレート皿がおかれ、彼らはしばし、本日食すクレープと対面のときを過ごす。クレープを全方向からながめたのち、生地をつまんでチェックし終わると、おしぼりでギュイギュイ指を拭いて品評をはじめた。
「いちごはまぁ合格かな。でも、生地の薄さが貧相極まりないねぇ」
「竹下通りとファミレスじゃ、クレープを焼く人間の気合がちがうからな。仕方がないさ」
「商品名もインパクトが全然ないよ。もっとデコ盛り感を出さないと」
「季節のストロベリー&生クリームスペシャル&チョコソース3倍がけ、に改名するのがよろしいかと」
「ご名案! まったくもって異議なし!」
満場一致の拍手喝采が止んだのち、彼らは折りたたまれたクレープの生地を破れないよう静かに展開し、直径を定規で測りだした。
「え~、直径は30センチです」
彼らはナイフとフォークに一瞥をくれ、「こんなものに用はない」と放り投げた。代わりにスクールバックの中から取り出したのは、キュートな桃色の『マイ包み紙』だった。
「クレープといったらコレだろ!」
両手首をシャカシャカひねり、クレープ巻き巻きポーズをとると、残りの男子高校生たちも「ジョ~シキです!」とポーズをまねた。
「さぁ、みなさん。クルクルしますよ」
桃色ギンガムチェックの紙で、皿の上のクレープを巻こうと格闘するそのあられもない姿は、横のテーブルに座る幼稚園児が「くっだらねー」と鼻をほじるくらい呆れたものだった。
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