第1章 生クリームが生んだ悪

6/17
前へ
/57ページ
次へ
  2.被害者  わたしの親友・橘田空詩(きったらら)ちゃんも、軍団に襲われた1人。空詩ちゃんはスイスと日本のハーフで超絶可愛い。ヘーゼルナッツのような茶色い目をしていて、髪色もなんだかシルキーで、ふわ~っとした感じの女の子。優しいし、どこからみても天使みたい。ヨーデルの民族衣装を着た空詩ちゃんの写真を見たとき、「ロリータになりなよ!」ってわたしは強くおすすめした。  空詩ちゃんがほっぺプニプニ軍団に襲われたのは、10月1日。今から1週間前だ。  代々木小学校に通うわたしたちは、原宿・竹下通りにずっと憧れを抱いていた。そしてその日はようやく「竹下通りデビュー」を果たした、記念すべき日だったのだ。  わたしたちは、原宿小学校に通うオシャレな女の子たちのことを「JS」と呼んだ。  JS――女子小学生の略。でも、わたしたちは真のJSじゃない。だって、放課後遊びに行く場所といったら、代々木公園だもん。  いまどき公園で遊ぶ女子小学生なんて、超ダサい! 子供っぽい! わたしたちは代々木上原の近くに住んでいて、そこから竹下通りに行くには、巨大な代々木公園が立ちはだかっていた。  放課後、竹下通りで遊んでる原宿小の子たちがうらやましかった。だって、学校帰りはすぐ竹下通りに立ち寄れる。クレープを食べたり、プリクラをとったり、可愛いヘアアクセを買ったりして遊んでる。  空手の稽古(けいこ)ばっかりさせられてるわたしとちがって、とってもオシャレな青春を送ってた。原宿小の子ばっかりずるい!  わたしはどちらかというとボーイッシュなタイプで、男の子みたいってよく言われる。でも、それはわたしが自分で望んだことじゃない。パパが洋服を買ってくれないから、近所のお兄ちゃんにもらったお古を泣く泣く着ているだけ。 「外見を着飾ることよりも、己の心身を鍛えよ!」  空手道場の娘に生まれたばっかりに、男子みたいに勇ましく育てられているわたし。道場でへっぴり腰な構えをすると「カンナ甘えるな!強くなれ!」って怒られる。そのときのパパは、雷さまみたいにおっかない。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加