第1章 生クリームが生んだ悪

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学校の中休みは、男子たちに「おい、武藤。プロレスするぞ」なんて誘われる。わたしはれっきとした女の子なのに、こんなのってひどすぎる! わたしだってJSになりたい!「キラキラしたJSガール」がやりたいんだ!  代々木小の平凡な女子は、原宿小の大人びたJSガールに笑われているような気がして、わたしと空詩ちゃんは勝手にメラメラと対抗心を燃やしていた。それで、ある日に空詩ちゃんと誓い合ったの。「4年生になったら、絶対竹下通りデビューしようね!」って。  わたしはおこずかいを必死に貯めこんだ。毎月300円ぽっちの悲しすぎるおこづかい。パパはおこずかいの話になるといつもこう言う。 「小学生は子供らしく習い事をして、心・技・体を鍛えるべし!」 「子供が大金を持って遊びにいくなど、言語道断(ごんごどうだん)!」  空手の先生をやってるパパは、JSになりたいわたしの気持ちを全然わかってくれない。己と向き合え、精神を鍛えろ。努力だ、汗だ、血だ、涙だ。そんなの青春じゃなくて武者修行じゃん!「男たるもの臭」がプワ~ンとしてるし、ぜんっぜん可愛くない。お年ごろな娘の青春をいったい何だと思っているんだ。  空手ばっかの汗まみれな青春なんて、イヤ~~って屋上から叫びたい!  眉毛もお胸も毛深くて、全然ファンシーじゃないパパには、キラキラした女の子の青春なんて一生わからない。だから娘のおこづかいが300円で十分だなんて思っているんだ。  ママに必死で抗議(こうぎ)したら、「10歳になったらおこづかいを500円にしてあげる」って約束してくれた。だから空詩ちゃんとは「わたしの誕生日に竹下通りデビューしよう」って約束したの。
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