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プロローグ
武藤カンナよ。
われわれは『ほっぺプニプニ軍団』だ。
決闘の申し出、喜んで受けて立つ。
いまこの瞬間、両者の『青春』をかけた戦いの火ぶたは切って落とされた。
原宿はわれわれが見つけた青春の場なのだよ。
ボクチンたちの『モチプニの青春』を邪魔する子は許さない……。
「皆の衆、かかれー!」
「イェッサァァァァ!!」
ーーーーーーーー
心の中で「ピーンチ!」と叫んだ瞬間、空からお菓子が降ってきた。
カラフルキャンディー、レインボーマシュマロ、パステルラムネ、そしてジェリービーンズ――。
わたしが『ほっぺプニプニ軍団』に襲われたとき、ピンチを救ってくれたのは、甘くて甘々で甘ったるいカラフルなお菓子たちだった。
おしゃれな女子小学生の聖地、原宿・竹下通り。その路地裏に『ブラームスの小径』とよばれる、怪しげな森の小道がある。
原宿のポップカルチャーを思いっきり無視した、ヨーロッパ全開の街並み。優雅なクラシックを聴きながら、紅茶とシフォンケーキでも食べたくなるようなその通りで、軍団に襲われ、クワガタみたいにひっくり返っていたわたしは、むくっと起き上がり背後を見上げた。
3メートルの高台にそびえ立つクラシカルな西洋館。高台を取り囲む防護柵のすき間から軍団の頭に「おりゃ~!」と、お菓子の袋をぶちまけたのは、赤いランドセルを背負った一人のJS(女子小学生)だった。
ベビーピンクのパーカーは、お胸にペロペロキャンディーのアップリケがついている。ゆるふわセミロングの上におだんごが2つ。そこにはロリポップキャンディーが、かんざしのように突き刺さっている。でっかいメガネはトンボみたいにグルグルで、鼻の下にはなぜかおヒゲがくるんとついていた。
「ハロぉ~♪」
柵のすきまから顔を出して、わたしを見下ろしたその子は、にぃ~と笑ってこう名乗った。
「ヘイ、ガール♡ あたしはロッタ。ほっぺプニプニ軍団をぶっ潰しにきたよー♪」
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