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いつか来るその日
「永理………あのね。
いつも聞きたくて聞けてないことがあるの。」
「なに?」
「永理はお父さん付きの天使でしょ?
いつか、お父さんが年を取って………死んじゃったら………」
亜華は喉を詰まらせた。
「亜華はお父さんがキライだろう?
別れが悲しい?」
永理はそんな言い方をした。
「キライだし、悲しくな………しいよ。」
永理は亜華を翼で包み込んだ。
「ごめん、無理矢理言わせて。
キライな人なんて、どうでもいいよね。」
「そう言われると、そうじゃない気がする。」
翼で温まった亜華は素直にそう言った。
「でもね、」
亜華は訊こうとして、やっぱり訊けなかった。
─── お父さんが死んだら、お父さん付きの永理も、当然みたいに天国に戻っちゃうの?
父親の死よりも、そのことが不安で悲しかった。
家族以外の不在を思って泣きたくなった相手は、永理がはじめてだった。
永理はただ、口ごもっている亜華の髪を撫でていた。
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