さまざまな事情

1/1
前へ
/14ページ
次へ

さまざまな事情

 永理が自分のことを話さないのには、たぶんわけがあるのだろう。亜華がうっかり人に話したらいけないような、そんな事情があるのだろう。  亜華はそう理解していた。  理解できないのは、両親のことだった。  最近、母親も父親も、年齢の話をよくする。  一人っ子で親戚付き合いもない亜華の気持ちも考えずに、俺たちももう先が長くないなとか、亜華の前で平気で言う。  どこのホームに入ろうかとか、家のことは亜華に任せようとか。本当に勝手だ。 「永理………。もう永理だけでいいよ。」  亜華の気持ちは、完全に両親から離れていた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加