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どのくらい時間が経ったのだろう。
泣き続けて、涙も枯れて少し冷静になったころ。肩が、ふっとあたたかくなる感覚がした。
はっとしておじいさんを見る。私が泣き続けている間、なにも言わず黙っていた彼はちょっとほほ笑んで、そしてゆっくりと諭すように言った。
「大丈夫、今も君の上には愛が降り積もってるよ」
「え」
「今も誰かが君のことを想ってるんだろうね。優しくて素敵な子だもの」
「違う」
「違うなんて言っても、本当に降り積もってるんだもの。感じるでしょう? 大丈夫、君はたくさんの愛をもらってる」
なにかに取りつかれたように、私の右手はフォークを握って柔らかなスポンジに突き刺した。口元まで運ぶ、けれどそこから食べる勇気がどうしても出なくて、彼を見る。
瞳に優しい光をたたえて、彼は大丈夫だというように頷いた。
「降り積もった愛はね、君を守る盾にもなれば、君の歩みを止める重石にもなる。愛されてるからって、苦しむ必要はないんだよ。愛はあくまで盾として使って、自由に生きればいい。愛されてるから期待に応えなきゃなんて、そんなこと考えなくていい」
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