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「パットーネ」という名前のケーキを口に運ぶ。今まで食べたどんなスイーツよりも甘くてやわらかくて、愛ってこんな優しくて甘いのかと驚いた。
ぼろぼろ涙を流しながら、私は夢中でパットーネをほおばった。一口食べるごとに胸のつかえがとれたように心が軽くなって、肩はまるで誰かに抱きしめられているかのように温かくなった。
「おいしい……おいしい」
「苦しかったね」
「苦しかった、辛かった、嫌だった。でも嬉しい、おいしい」
自分でもなにを言っているのかよくわからなかったけれど、おじいさんはうんうんと何度も頷いてくれた。
ふわふわのスポンジにクリームをたっぷりつけて、花のような香りがする紅茶とともに飲み込む。
いくら食べても飽きなくて、パスタとスープを食べた後にこんなに食べられるわけがないと思った大きなパットーネはどんどん小さくなっていった。
「時々は、食べにおいで」
お皿に盛られた最後のかけらを私が口に入れると同時に、おじいさんは優しくそう言った。
「積もりすぎた想いは食べてしまえばいい。もっと自由に生きなさい」
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