前菜

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 「その『想い』っていうのは、全員の上に降り積もってるんですか」 「そうだよ。君がいる世界に生きる人、全員にね」 「それで、あなたはそれを集めてるんですか」 「そう。それが降り積もってると、体も重くなるしね。それに私たちの世界ではそれがおいしい料理の材料になる」 「材料?」 「そう。そっちの世界の人は体が楽になるし、私たちは食材が手に入る。お互い良い関係だと思うよ」 「はあ」 「まあ普通そっちの世界の人は私たちが見えないから、気づくことはないだろうけどね」  普通、という言葉に小さく胸が痛んで、その痛みをごまかすために私はココアをぐいっと飲み干した。  そんな私を見て、おじいさんはほほ笑んだ後、「よくわかってないね?」と言った。  「想い」が「降り積もる」なんて、ましてそれが「食材」になるなんて、そんなこと今まできいたことがないのだから当たり前だ。  そんな気持ちが表情に表れていたのか、おじいさんはくいっと眉毛をあげて、そして「ごちそうしてあげるよ」と笑った。
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