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スプーンを握る自分の手が、すっと冷えていくのが分かった。
おじいさんから言われた言葉を、頭の中で反芻する。
私が、私自身に向けた憎悪?
「どうして私が君の上に降り積もった想いを取りに行ったか、わかる?」
黙ったままの私に向かって、彼は続けた。
「限界だったからだよ」
「限界……?」
「これ以上は耐えらないほど、大量に積もってた」
どうしておじいさんがそんなに悲しそうな顔をするのか、よくわからなかったけれど、その目が私を蔑むようなものではないことに少しほっとする。
「……想いが降り積もりすぎたら、どうなるんですか」
ぼんやりとつぶやくと、彼はちょっと顔をこわばらせ、そして静かに言った。
「辛くなって、体も重くなって、そして最悪、死ぬ。……君はその一歩手前まで来てた。自分を憎んで、自分の上に憎悪を降らせるのは、もう止めなさい」
視界が滲んで、目の前がぼやけた。
私にだけ見えるあっちの世界の人と関わらないようにしてきたのは、怖かったからじゃない。彼らと目が合うこともあったし、話しかけてみたいと思うこともあった。
けれどそうしなかったのは、それが私がこっちの世界でうまく生きていく上での障壁になったからだ。
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