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靴磨き
我が家では子供でも仕事を与えられていた。
5歳年上の兄・昭彦は全ての部屋に掃除機をかける。
自分は2階の廊下から階段、1階の廊下と箒で玄関まで掃き出し、
玄関を掃除。
もう一つが父親の靴磨きだった。
父親から教わった通り、汚れを落とす白いクリームを塗る。
白いクリーム用の黄色いブラシで全体に延ばす。
艶が出るまで布で拭く。
使用済みの歯ブラシに靴墨をのせ、全体に延ばす。
皺の寄ったところは重点的に。
靴墨用のブラシで磨く。
艶が出るまで布で拭く。
これを毎週日曜日にやらされていた。
ある時、母・綾子から父親のズボンの裾を見せられた。
グレーのズボンの内側が靴墨で真っ黒だった。
それを見た途端、火の点いたように泣き出したのを覚えている。
キレイにしたい、という思いが靴墨の量に出てしまったのだと思う。
当時まだ4歳、無理な話だ。
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