4人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
それから小学校に入るまでには靴磨きは習得。
米粒2つほどの靴墨を全体に薄く延ばし、キレイに拭き取った。
時々チェックしたが、裾を汚すことはほとんどなかった。
靴磨きは毎週続いた、反抗期で一切口を利かない間も、
靴だけはピカピカにしてやった。
手入れに自信があったので父の日か誕生日に
リーガルの靴をプレゼントしたような気がする。
靴磨きは父親に出ていけと言われるまで続いた。
会社帰りに毎晩呑んで午前様を繰り返していた自分は
実家から、追い出されてしまった。
毎週の靴磨きは22歳の時で終わった。
家を出て、たまに実家に帰った時、父親の靴を見る。
キレイにはされていたが、靴磨き歴20年の自分には及ばない。
1人暮らしを始めてからも、毎週自分のブーツを磨いていたから。
結局、実家に帰る度、靴を磨いた。
リーガル。何度か修理をして履いていた。
父親の定年後、磨く靴が無くなった。
そして去年、父親が亡くなった。
葬儀を執り行うにもブーツしか持っていない自分に、
母・綾子が出したのがあのリーガルだった。
左の親指の付け根部分に穴が開いていた。
葬儀が終わり、リーガルも最後の役目を果した。
最初のコメントを投稿しよう!