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「えっ、ぼ、僕ですか……⁈」
ひょいと僕を摘まみ上げて、ソレは肩のあたりに乗せた。こんなの無茶苦茶だ。でもそんなことを軽々とやってのける男というのが弓弦様という御人で、いつだって荒業で大半のことを片付けてしまう。
この骸骨もどうせ弓弦様の子分か何かなのだろう、屋上に僕を降ろすとソレは会釈一つ、どこかに消えてしまった。
「久しぶりだな、理人」
顔を上げると、そこには一人の男が立っていた。桔梗色の着物と羽織に身を包み、首元にはブランドもののマフラーをぐるぐると巻いているというカジュアルな着こなし。いかにも伊達男だがそこにうさん臭さも付きまとう彼こそ、僕が電話していた相手である久我弓弦、待ち合わせをしていた相手だった。
「ひどいじゃないですか弓弦様! 迎えに来て下さるというから期待していたのに、骸骨を迎えに寄越すなんて」
「ああ、すまん。びっくりさせてやろうと思ってな。でも、ちゃんと会えただろう」
「はい。お久しぶりです、弓弦様」
少し泣きそうになりながら名前を呼ぶと、笑って頭を撫でられた。
「大きくなったな。背丈はあまり伸びていないようだが……」
もう子どもじゃないですと言ってやりたくなったがやめた。久しぶりに会った感動に胸を詰まらせながら、あまりの懐かしさに泣きそうになっていたからだった。
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