幸せな確信

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言葉に力を乗せて喋る。 なるべく力は使いたくはなかったけれど、非常事態なら仕方ない。 「近寄らないでください、航様。僕、貴方のこと呪ってしまった。貴方がいなくなるように神様に祈った。何かを恨んでも、何も得るものはないのに」 久我航という人はもういない。死んでしまった。 おそらくただひたすらに好きだと言って僕を囲っていたその人の、遣る瀬無いほどの無力さ。 理人や弓弦が術にかけては天才というなら、航はきっとその逆だった。それが自分達と彼を大きく隔ててしまい、彼を心病ませたのだと思うと切ない。 酷い人だったと憎むことは簡単だった。でも、そんな自分の浅はかさが本当に彼を化け物にしてしまった。 「もう貴方のところには戻りません。人を食べるのは強くなる為ですか?それとも糧とするため?いずれにせよ……もう貴方を以前の航様とは思えない」 僕は弓弦様に持たされていた紙形に力を乗せて、航様の方へと放った。 あ、あああああ。 にくらしい にくらしい ゆずるめ、ゆずるめええええ 蜘蛛の巣のようにうすぼんやりとした光が彼の身体に纏わりつき、絡む。彼は黒い霧になって消えてしまった。 以前と姿が変わっているように見えたのは、実際にその姿を見たのが初めてだったから……だろうか? 「兄貴、どんどん大きくなっていくな」 弓弦様に航様と会ったことを話すと、あっさり僕の疑問を解消してくれた。 「……やっぱり。以前はドア越しでしたから、直に見たことはなかったんです」 「アレは、鬼のような性質があるとみた。人間を食い、どんどん力を付けていく。まるで現在の酒呑童子だな」 「坂田金時や源頼光に討伐された鬼でしたね」 僕は悲しいことに、航様のおかげで弓弦様との同居を始めたということになる。素直に喜べなくてしょんぼりしていると、イチが心配そうに顔を覗き込んできた。 「理人殿っ、憧れの同棲生活ですよっ!」
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