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航様と弓弦様は双子の兄弟だけど、久我の決まりとして長子に久我の御業を授ける。一子相伝の決まりが弓弦様を苦しめ、同じ双子だというのにだいぶ肩身の狭い思いをしてきたみたいだ。
「弓弦様には力も人望もあった。勿体ないなって思ってしまうこともあります。でも……弓弦様の決めたことなら、僕はそれに従います」
「久我に従うのがお前の使命じゃないのか?」
「ええ、以前は。でも僕はもう、帰らないですから」
僕が言った言葉に弓弦様は目を丸くさせていた。
「お前、本気か?」
「言ったでしょう? 僕、弓弦様に会いに来たんですよ」
この古ぼけたように見える店、稲成のうどんは非の打ちどころのないうどんだった。コシのある麺と優しい味の出汁、こんなに美味しいうどんを弓弦様と二人並んで食べているということが、一番の巡り合わせだった。
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