ギルバートの話

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* 先の喧嘩でおれは方向転換を決意した。 急に降ってきたマトリという脅威を警戒して兄の好き勝手を咎めてきたが、それだけでは駄目だと気付かされた。そして考えて、これを逆手に取ろうと思った。 兄を完全に止められないのなら、マトリを未然に回避すればいい。 そこでおれの推測だけど、服用者とは結局"現行犯逮捕"が原則ではないだろうか? 犯罪者か否かを見た目で判断出来ないのと同じで、どんなに悪魔と言われようが服用者が得たのは特殊な能力だけだから、見分けられないと思う。 服用者を服用者と証明するのは魔薬による効力だけではないか? そうならまだ少しはおれ達にも救いがある。 吸血鬼の話題はまだイタズラ通報の域を出ていない、残忍な服用者による大きな事件ばかり追うマトリの捜査網にも触れはしないだろう。 だからまだ間に合うはずだ、やり直せる。 それに幸にもおれは警察だ、通報もそれに対する署の対応もよく分かる。 今の間に火消しをすれば、おれ達はまた自由になれるはずだ。 ただこの時のおれは気づけていなかった。 服用者の見分けがつかないという事は、警察署内に居るマトリの班員にも同じ事が言えると。 それに、兄が生きる為に必要な血の量も。
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