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ある盆休み。
ばあちゃん家の縁側で寝ころんでいると、つむじにツンとしたかゆみが走った。
蚊に刺されたのかと思って、爪でポリポリ搔いていると、
「カズオ、触るな!」
庭先にいたばあちゃんが、俺の頭を見つめながら近づいてきた。
「やっぱり――。あんた、頭に『黄金の綿毛』がついたよ」
鏡で確認すると、ふわふわとしたタンポポの綿毛が頭頂部についていた。
綿毛は光の粒子を放出し、小さな銀河のようにきらきらと輝いている。
「きれいだねえ……」
ばあちゃんは綿毛を見つめながらうっとりして「うちの孫は死ぬまで安泰だ」といった。
ばあちゃんは綿毛をつまむと、ぐっぐっと上に引っぱった。
「よし、根が張った」
それは髪の毛を引っぱられるのと同じで、頭皮をむくっと持ち上げた。
「カズオ、今から言うことを心して聞け」
神妙な面持ちでばあちゃんは口を開いた。
「お前はまもなく……とんでもない大金持ちになる」
まさかと耳を疑った。
俺が、大金持ちに……?
「この綿毛は、大金が舞いこむ前兆だよ」
ばあちゃんいわく、世界の名だたる大富豪も、宝くじの高額当選者も、みんなこの綿毛が頭頂部に付着したのだという。
「カズオ。この綿毛を育てなさい」
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