黄金の綿毛

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東京に戻り、公園の木陰にあるベンチで雑草図鑑をひらいた。 【タンポポ……キク科。多年草。生命力が強く、同じ場所で何度も花を咲かせる】 「ふうん――タンポポって、同じ場所で何度も咲くんだ」 公園にはたくさんの雑草が生えていた。 俺はかがんで地面にタンポポがないか探した。図鑑にはセイヨウタンポポは夏でも花を咲かせると書かれていた。 夏の日射しを浴びて、ぐんぐんと成長した雑草をかきわけながら探していると、靴の下に何かがいるのを感じた。 「あっ……」 足をどけると、タンポポの花がくたっとしおれて倒れていた。 「こんなところに」 摘みとってみると、なんとも素朴で慎ましい花だった。 「大金を運んでくる、か……。そんな植物には見えないけどな」 育てろと言われても……。 どうしたらいいものか……。 ばあちゃんのアドバイスは「頭皮をいたわってみろ」とのことだった。畑仕事をしているだけあって「良い土壌をつくれ」ということらしい。 毎日シャンプーをして、風呂上がりには頭皮を揉み、ブラシでトントンと叩く。 頭皮に生えているのだから血行をよくすれば綿毛は成長するのではないか、との考えだった。 なるほど。 俺はそれからというもの、頭皮の健康を第一に考えた生活をはじめた。 「これだ……」 薬局へ出向き、スカルプケア用のシャンプーを買った。一日に抜ける髪の毛の量を調べると50~100本とあり、綿毛が抜けてしまわないかヒヤヒヤした。 「うわっ、成長してるよ……」 数日すると、綿毛は白い芽を出し二枚の葉をつけた。やがて二枚が三枚に、そして四枚になって、ギザギザとした葉に変わった。
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