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その後も予想どおり、金を使い果たすと、頭頂部にはまたタンポポの花が咲いた。
宝くじが当たる、競馬で儲かる、カジノで大勝利をおさめる。
「カネだ……カネだ……ぜんぶ俺の金だ!!」
黄金の綿毛のおかげで、金運はグングン上がりっぱなしだ。まるで、金ピカの龍にまたがり、天へと駆け昇っていくような気分だ。
発芽、開花、綿毛。
このサイクルをくりかえし、俺の資産は使っても、使っても、尋常ではない桁まで増え続けた。それと同時に、タンポポの花も次第にサイズが大きくなり、たくましく育つようになっていった。
「この綿毛はすごいぞ!!!」
とんでもない大金持ちになる。
ばあちゃんの予言は本当だった。
調子にのった俺はさらにお金を増やそうと全資産を株につぎこんだ。
「大丈夫。失敗してもまたタンポポは咲く」
金よ、もっと舞いこめ。
札束よ、もっとなだれこめ。
そのためには頭皮を、
「毛根」を強化しなければ。
俺は漢方医のもとをたずね「頭皮に効く漢方薬をください」と相談した。
漢方医のじいさんは俺の舌や手のひらなどを診察すると、頭頂部を見た途端「これは育てない方がいい」と許可もなく綿毛を引っこ抜こうとした。
「お、おい、やめろ!」
俺はあわてて漢方医の手をのけた。
「綿毛にさわるんじゃない」
漢方医は古い医学書を取り出し、ページを開いた。
「諸説ありますが、この綿毛は大変恐ろしいものですよ。中国伝来の書物によれば、この綿毛は『不幸の前触れ』と記されています」
その日、漢方医は「綿毛が自然と抜ける漢方薬」を俺に処方した。
「この粉薬をお飲みになって、どうぞ養生なさってください」
こんなもの誰が飲むか。
俺はそれをポケットに押しこんだ。
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