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継実の仕草を目聡く見咎めた有志の観察力には頭が下がる。繋がった視線の先で、有志が小さく合図を送っている。
「え! 立花まで彼女持ちぃ?!」
もう一段崩れるような仕草をしながらの平井の視線を受け、継実はブンブンと手を振った。
「違う! 彼女なんていない」
「本当に?」
どこか探る口調の有志に継実はうんうんと頷くのが精一杯だ。
「いいや。絶対彼女いんだろ? おかしいって思ってたんだ、立花いつも速攻帰るじゃん! なに? 彼女って学校違うカンジ?」
怨めしげな宇野に継実は、そうじゃないと返す。
たしかに宇野の言うとおり、いつもホームルームが終わればわりとすぐに帰る。でもそれは帰宅部である継実にとっては至極あたり前の行動だと思うのだ。
「西田も立花もズルくねぇ? 折角、俺たちの親睦を深めるチャンスなのに!」
平井の大袈裟ともとれる言い方に継実は面食らって、言うべき言葉を見失った。
「別にズルくはない。それに継実は違うって言ってるよ。平井もさぁ、好きな子見つけて誘えばいいんだよ、行動あるのみ、平井イケメンなんだからさぁ」
継実とは違い有志は余裕のある声でそんなことを言い、遣り取りを見守っていた宇野が、だったらと口を開いた。
「だったら、当日までに彼女ができたヤツはそっち優先で、できなかったヤツは一緒に行くってことにするか?」
「……うん、それがいい! それより、有志の彼女って誰?」
リーダーの宇野の提案を矢島が肯定し、話題はさっさと有志の彼女の話に移っていく。
結局、皆そこが気になっているのだと三人の表情は語っていた。
「えぇ? それ聞くの?」
「あたり前だろ、ホントは聞いて欲しいクセに」
「で? 誰だよ? クラスのヤツか?」
「さあ、どうだろう?」
「なんだよ、勿体ぶらなくたっていいじゃん」
有志を真ん中に展開される会話に、継実は弁当の後に連れ立って食堂の自販機まで買いに行ったカップ入りの甘ったるい炭酸飲料に口を付けた。
正直、有志のおかげで自分から話題が反れてよかったと思う。あのまま追及されたとしても別にやましいことはないのだが、それでもいちいちの説明は面倒だった。
そんなふうに思う辺りが、中学での三年間で友人と呼べる存在ができなかった原因のひとつであると自覚はあるが、持って生まれた性格は、そう簡単に変わったりしない。
高校の友達と行けと言うトラの提案は、そういう意味でも継実を困らせる。
自分はただ本当に一緒にいたい人物と夏祭りを楽しみたいだけなのに、なにがそんなに難しいのか、どうしてあの幼馴染はあんなにも頑ななのか。
継実はバレないようにそっと天井を仰いだ。
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