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     *  もう少し行けはアスファルトで舗装された道は終わり、継実の住む地区への分岐点がある。  自転車を漕ぎながら、継実は小さくため息を吐いた。  ため息の理由は、有志からの頼みごとのせいだけではない。夏祭りの件を今日はトラにどう切り出そうかと考えているのだ。  我儘だけを通すつもりはないが、結果そうなっていないだろうかという思いとは別に、有志と話すうちに気がついた可能性が気を重たくさせている。  はぁ、ともう一度ため息を吐く。  高校の友達と行けと言ったあとに彼女とでも、続けたトラ自身に継実の知らぬうちに彼女ができたかもしれないと気付いたのだ。  いや、別に、そのこと自体に問題はない。いつも少し暇そうな五つ年上の幼馴染に彼女ができたとして、それはそれでいいことだと思う。ただ、報告すらしてくれないのは薄情ではないだろうか。もしもその報告を聞いていたなら、夏祭りの件だって諦めはつく。  自転車は分岐を曲がり上り坂に入る。  急に傾斜がきつくなり、考え事に気を取られている状態ではあっという間に失速してしまい、諦めた継実はブレーキをかけ自転車を下りた。 「ツグミ!」  途端に声が聞こえてきた。  声の主を探して巡らせた視線の先で、シロを連れたトラが片手を上げて笑っていた。  今日のシロは体調がよかったのだろうか? それにしても、ここから家までは歩きでニ十分ほどかかる。その距離を今のシロが歩いてきたとは驚きだ。 「ただいま」  進みながらハンドルから手を離し、合図を送る。  シロのほうはまったく気付いた風はなく、立ち止まったトラの足元に少し崩れた格好のお座りをして地面のにおいをかいでいる。  シロに残された感覚は嗅覚と触覚なのかもしれないと急にツグミは思いあたり、先を急いだ。一刻も早くシロのもとに辿り着き、その頭を撫ぜてやりたかった。 「ほらシロ、ツグミ帰ってきた」  トラがしゃがみ込んで、シロに教えている。
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