三六五回目の初雪

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 アルカ、ミーシアの二人は防護服を身にまとい、ガスマスクを被ると、輸送艇から落とされた鉄塊の山を登りはじめた。ガチャリ、ガチャリと鈍い音が足元で響く。  ミーシアは義手のロボットアームで価値のありそうな機械部品を、掴んでは放り投げていた。 「どう、アルカ。めぼしい部品は見つかった?」 「亜空間航行用のハイパープラグがいくつかあるけど、汚染濃度が限界値を超えてる。洗浄でどうにかなるレベルじゃないなあ」 「多少の汚染だったら、スノーコーティング(汚染除去加工)するからいいわよ」  アルカは鉄塊の山の(いただき)に到着したところで、思わず声をあげた。 「なんだこれ? すごいもの発見した!」  ミーシアがアルカのもとまで足を運ぶと、そこにガラス窓のついた銀色の円筒カプセルがあった。 「何かしら? 機械部品ではないようね」  アルカがガラス窓の(ほこり)をグローブで拭き取ると、そこに少女の眠る顔が見えた。 「げっ母さん、人が入ってる!」 「……冬眠用コールドカプセル? 持ち帰って調べてみようか」  二人はそのカプセルを山から引きずり下ろすと、再び価値のありそうな機械部品を拾い集め、ガベージコレクターに積み込むと、車のアクセルを踏んだ。   置き去りにされた巨大戦艦を横目に、夕陽が赤く照らす大地をひたすら走り続ける。
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