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フェイドイン
広いエントランスを抜けると、左右の石像に迎えられ、その奥に幅広い階段が続いていた。
受付で入館料を払い、私は、ゆっくりとその階段を上っていく。
入口で、チケットを見せ、図録をもらい、中へと入った。
薄暗い照明度合いが、まるでお酒に酔った時のような心地よさを覚える。
少し中まで進み、暗がりに身を置くと、一定の距離で、絵画が架けられた。
展示されている絵画を順路通りに見ていく。
まだ、午前中なので、客は私ひとりである。
じっくりドリップした、淹れたてのコーヒーは、豆にこだわり、いつも同じ店で購入している。
ゆっくりと口に含むと、深みのある苦味が、私の体の全細胞を目覚めさせるようだ。
(ー休みだし、ちょっと出掛けてみようかなー)
残りのコーヒーをすすり、徐に、趣味の園芸雑誌をめくりながら、そう思い立ち、手元にあったスマホで、美術館の展示情報を調べてみる。
(ー帰りに駅の近くの喫茶店にも寄ってみよう!ー)
クローゼットの溢れる服の中から、ラフな服を選び、自分なりのお洒落をして、玄関のドアに鍵をかけた。
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