フェイドイン

1/1
前へ
/1ページ
次へ

フェイドイン

   広いエントランスを抜けると、左右の石像に迎えられ、その奥に幅広い階段が続いていた。 受付で入館料を払い、私は、ゆっくりとその階段を上っていく。 入口で、チケットを見せ、図録をもらい、中へと入った。 薄暗い照明度合いが、まるでお酒に酔った時のような心地よさを覚える。    少し中まで進み、暗がりに身を置くと、一定の距離で、絵画が架けられた。 展示されている絵画を順路通りに見ていく。 まだ、午前中なので、客は私ひとりである。    じっくりドリップした、淹れたてのコーヒーは、豆にこだわり、いつも同じ店で購入している。 ゆっくりと口に含むと、深みのある苦味が、私の体の全細胞を目覚めさせるようだ。 (ー休みだし、ちょっと出掛けてみようかなー) 残りのコーヒーをすすり、徐に、趣味の園芸雑誌をめくりながら、そう思い立ち、手元にあったスマホで、美術館の展示情報を調べてみる。 (ー帰りに駅の近くの喫茶店にも寄ってみよう!ー)  クローゼットの溢れる服の中から、ラフな服を選び、自分なりのお洒落をして、玄関のドアに鍵をかけた。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加