03.綿原君の合流

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03.綿原君の合流

 新幹線のホームに降り立つと、師走の狂暴な寒さが身を震わせた。シャイニーブラックのダウンジャケットのポケットに手を避難させ、手袋を探した。お腹に使い捨てカイロを貼っておいて正解だった。暖房の効いた車内から一転、冬の匂いが鼻を突く。寒い寒いと皆で念じるように言い合いながら、暫く歩くと体も呼吸も慣れて来る。北国のDNAのなせる業だ。昼下がりの新青森駅前は陽射しのお陰で体感的には暖かかった。スマホの天気アプリを見ると、日中でも氷点下を示している。縄文時代にはコートもブーツも使い捨てカイロもなかった。挿絵でみる姿は原始人然としているが、冬を越すのは厳しそうだ。本当に軽装な民族がこの雪国に栄えていたのだろうか? 僕は足元の大地に問いかけるように、凍えたアスファルトを見下ろした。
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