03.綿原君の合流

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 駅近くのレンタカー屋でSUV車――エクストレイル――に荷物を積み込んだ。キムテンはこのまま帰省するから多めの荷物だけど、伊桜さんは女子なのに一番荷物が少ない。きっと旅慣れているんだ。温泉マニアは伊達じゃない。部長の装備は海外のバックパッカーみたいに大型だ。仙台駅で合流した時、僕は「山籠もりでもするんですか?」と半ば本気のジョークを飛ばした。ミリタリールックの部長は「それも可能だ」と真顔で答えた。カーキ色のフライトジャケットの不審人物はサバイバルナイフも所持してそうで、道中、職務質問にあわないように祈った。  宿泊先は、秘湯が売りの雪深い山奥だ。四輪駆動でスタッドレスタイヤを装着しているが、タイヤチェーンも用意してもらった。 「部長、チェーン着けられるんですか?」 「大丈夫だろ。最悪、地元の人もいるんだし」 「はい? わたしは無理ですよー」 「キムテンには期待していない。幼馴染の方」 「あー、こうちゃんか」 「キムテン、イントネーション変わってない?」 「だはんで青森の匂い嗅いだら、訛ってくるんだって」
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